東京高等裁判所 昭和43年(ネ)2185号 判決 1969年3月27日
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は、控訴人の負担とする。
事実
控訴代理人は、「原判決中控訴人敗訴の部分を取り消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。」旨の判決を求め、被控訴人は、主文第一項同旨の判決を求めた。
当事者双方の事実上の主張および証拠の関係は、原判決の事実摘示のとおりであるから、その記載を引用する。
理由
一 当裁判所も被控訴人の請求は原判決が認容した限度において正当であると判断する。その理由は、つぎに付加訂正するほかは、原判決の理由中に説示するところと同一であるから、その記載を引用する。
(一) 原判決八枚目表二行目から五行目の全文(理由第一項の全文)を、「一被告高橋が土木建築業を営む被告会社(控訴人)に配管工として雇用されていたことおよび原告(被控訴人)が昭和四十一年十一月十二日東京都三鷹市上連雀において東京都水道局施行の上水道管敷設工事に従事していたことは、いずれも当事者間に争いがない。」と訂正する。
(二) 同八枚裏一〇行目「のそばに、……」から同一一行目「てある梯子を」までを、「にかけてある昇降用梯子をつたつてその穴に」と訂正する。
(三) 同一〇枚目裏一行目から同八行目までの主文を、「しかして、右に述べたとおり、本件暴行は土木建築業を営む被告会社(控訴人)に配管工として雇われ、同社の前記上水道管敷設工事に従事していた被告高橋が、右工事に使用するために、同じく右工事に従事していた原告(被控訴人)に対し、のこぎりを手渡してくれと頼んだことに端を発し、前記のような経緯をたどつて、右工事現場においてなされたものであるから、被告高橋が被告会社(控訴人)の事業を執行する過程において行つたものであるといえることは明らかで、右暴行によつて原告(被控訴人)が受けた損害は、被用者が事業の執行に付き加えた損害になるというべきである。被告会社(控訴人)は、被告高橋の一時的感情により同被告が暴行に及んだのであり、同被告の個人の問題であるから、それは事業の執行と関係がない旨主張するが、右認定事実にそわない主張であつて、採用できない。けだし、もとより、本件暴行が被告高橋の(個人的)感情と無縁のものでないことはいうまでもないが、さりとて、そのためにこれが控訴会社の業務の執行についてなされたものでなくなるわけがないからである。
(四) 原判決一二枚目表二行目「九万円づつ」を、「九万円ずつ」と訂正する。
二 そうすると、右の限度で被控訴人の請求を認容した原判決は相当で、本件控訴は理由がない。よつて、これを棄却することにし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九五条、第八九条を適用して、主文のとおり判決する。